きままに図書館

年間120冊ほど本を読む”本のむし”です。心に染みた本たちの備忘録&ご紹介をしていきたいと思います。ネタバレありますのでご注意願います…!

有川浩『塩の街』あらすじ・感想

塩の街有川浩

第10回電撃ゲーム小説大賞塩の街wish on my precious』で2004年デビュー。2作目の『空の中』が恩田陸大森望氏はじめ読書界諸氏より絶賛を浴び、『図書館戦争』シリーズで大ブレイク。他著作に『植物図鑑』『阪急電車』『フリーター、家を買う。』等があります。

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あらすじ(「BOOK」データベースより)

塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが―「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。『空の中』『海の底』と並ぶ3部作の第1作にして、有川浩のデビュー作!

内容

ある物体が東京へ落ちてきて、その日を境に「塩害」と呼ばれる、人の体が塩になり死んでしまう奇病が広まるという話です。塩害により東京の人口は1/3にまで減少し、市民を守る警察もいなくなり、秩序がない世界となってしまいます。そんな中で、女子高生の真奈と元自衛官の秋庭が出合い、2人を軸に物語は進んでいきます。

そこに「世界とか、救ってみたくない?」と自衛官の秋葉を誘う人物が現れ、地球を守る為に活躍する物語です。

感想

塩の街』は『空の中』『海の底』と並ぶ自衛官シリーズ3部作の第1作です。私は知らずに『空の中』から読み始めましたが、繋がりはなかったので問題ありませんでした!SFと恋愛がミックスされていて男女問わず、楽しく読めるのではないかと思います。とにかく真奈が可愛くて、秋庭はカッコいい!

 

話の中で「愛する人が塩害になった男性」や「塩害になった囚人」などと出会いますが、これがまた切ない…。もし自分の大切な人が塩害になってしまったら…とありえないですが考えてしまい、ものすごく悲しくなりました。

有川さんの小説は、有名な「図書館戦争」から読み始めました。空想話なのに、身近で発生しそうな錯覚を起こすほどの緻密な設定と、隊員の躍動感が目に見えるように伝わってきます!

あ~、3部作全部映画化してほしい!!

東野圭吾おすすめランキングTOP10!明日からファンになること間違いなし

東野圭吾おすすめランキング!TOP10!

 

ほぼすべての東野圭吾作品を読破した私が選ぶおすすめ10作品をご紹介いたします!

小説の中の空気感や登場人物の心情が丁寧に書かれているので、普段あまり本を読まない方でも読みやすく、本にはまるきっかけになるかもしれません!!!

1位:変身

世界初の脳移植を施され一命を取り留めた青年、成瀬純一が主人公の物語。恋人とのささやかな日常を取り戻した彼に異変が訪れる。凶悪化する性格、変わりゆく才能。変化を止められない純一は、提供者(ドナー)の影響を疑う。提供者の正体は誰なのか。他人の脳に支配されたとき、彼女を愛する気持ちも消えてしまうのだろうか。

こんな時・こんな人向け:はらはらするようなスリルを味わいたいとき

抗えない性格の変化に純一は苦悩します。そんな純一支える恋人・恵もまた、乱暴になっていく純一の変化に戸惑い、愛し続けることが正解なのか葛藤します。純一の一人称が「僕」から「俺」に変わったことに気付いたとき、ゾっとしました。最後に勝つのは『脳』か『心』か…純一はどこまで落ちてしまうのか、はらはら・どきどき心臓が波打っているのを感じながら読みました。

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2位:秘密

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。

こんな時・こんな人向け:どんでん返し好きのかた。泣きたい方。

「ありえない設定だな」で、終わらせたくない。ヒトの愛や嫉妬心、覚悟をひしひしと感じる一冊です。主人公は夫・平介ですが、妻・直子の葛藤も伝わってきます。藻奈美の体になり若さを手に入れた直子に抑えきれない嫉妬心を感じてしまう様子や、妻以外の女性に惹かれてしまう恋心、性生活等、リアルな部分まで丁寧に描かれております。衝撃のラストは涙涙です。詳しいあらすじ・ネタバレの記事も書いておりますので、よろしければ読んでください!

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3位:白夜行

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。

こんな時・こんな人向け:頭を使いたいとき。長編を読みたいとき。

亮司と雪穂の関係性は、単純に被害者の息子/容疑者の娘ではありません。事件後19年たっても繋がっているが、2人をつなぐものは何なのか。愛か、罪悪感か、利害関係か―。「分厚い!!」と思うかもしれませんが・・・読み始めてみてください。一気読みです!白夜行』のタイトルの意味を知った時、切なくいたたまれない気持ちになります…。

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4位:さまよう刃

長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える―。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編

こんな時・こんな人向け:一気読みできる環境があるとき。重いテーマに向き合う覚悟があるとき。

娘を蹂躙された挙句殺害されたシングルファザー長峰の物語です。「国が裁けないのであれば自らが罰す。」少年法によって守られた少年らを自らの手で抹消すべく、復讐に取りつかれた長峰の末路はいかに…。かなり暗い物語ですが、ページを守る手が止まりません。長峰にとって憎むべき法律『少年法』について、共にその存在理由を問いたくなる重い一冊です。読み終わった後、数日間寝ても覚めても、この本のことが頭から離れませんでした…


5位:ナミヤ雑貨店の奇蹟

悪事を働いた少年3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

こんな時・こんな人向け:心を温めたいとき。泣きたいとき

ほっこりする小説で最後には泣けます。時空を超えるお話ですが実際に合った歴史の出来事が書かれている為、読みやすい一冊です…!映画もよかったですが、端折られてるので小説の方がお勧めです。

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6位:時生

不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った―。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。

こんな時・こんな人向け:泣きたいとき。心が荒れているとき。

いろいろな東野圭吾作品を読みましたが、ほかの小説とはなんとなく違った雰囲気でした。「あの子に訊きたい。生まれてきてよかった?」悩む妻の言葉は物語が進みラストが近づくにつれて心に染みていきます。タイムトラベラーの物語ですが、SFというより感動的な愛の物語です。最後の一行には鳥肌が立ちました。

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7位:新参者

日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。

こんな時に読みたい:なんだかすっきりしたいとき。頭のいいひとが好きな方。

大好きな加賀恭一郎シリーズです。シリーズの順番は1.『卒業』2.『眠りの森』3.『どちらかが彼女を殺した』4.『悪意』5.『私が彼を殺した』6.『嘘をもうひとつだけ』7.『赤い指』8.『新参者』9.『麒麟の翼』10.『祈りの幕が下りる時』ですが、私は知らずに新参者から読んでました。若干知らない人が出てくるな~とは思いましたが問題なく読了。阿部博主演で映像化されているため、有名な作品かと思います。1~7はあまり加賀が目立っている印象はないためランキングインしませんが、この第8作目『新参者』からは頭脳明晰で頭の切れる加賀が活躍し、かなりおもしろいです。

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8位:幻夜

おまえは俺を殺した。俺の魂を殺した――1995年、阪神淡路大震災。その混乱のまっただ中で、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃していた女。二人は手を組み、東京に出ていく。女は、野心を実現するためには手段を選ばない。男は、女を深く愛するがゆえに、彼女の指示のまま、悪事に手を染めていく。やがて成功を極めた女の、思いもかけない真の姿が浮かびあがってくる。彼女はいったい何者なのか――謎が謎を呼び、伏線に伏線が絡む。驚愕のラストシーンまで一気呵成の読みごたえ。ミステリーの醍醐味にあふれた傑作大長編。あの名作『白夜行』の興奮がよみがえるミリオンセラー。

こんな時・こんな人向け:白夜行が好きな方。悪女に憧れがある方。

幻夜白夜行の続編とも言われており、美冬=雪穂ではないかとの憶測がネット上にも飛び交っています。確かに沢山共通点はあるな~と感じます。ただ美冬のほうが雪穂よりもはるかに悪女だと思います…あまり感想を書くとネタバレしそうなのでやめておきますが…白夜行にはまった方は絶対に好きだと思いますので是非!

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9位:祈りの幕が下りる時

明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。シリーズ最大の謎が決着する。吉川英治文学賞受賞作。

こんな時・こんな人向け:泣きたいとき。しっかりしたミステリーを読みたい方。

加賀シリーズ最終章です!映画もいいですが小説もいい!!!!!阿部寛と松嶋奈々子キャストはピッタリすぎです…!読了後は切なさと悲しさでいっぱいですが、同時に親子の愛も感じる作品です。。。

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10位:流星の絆

何者かに両親を惨殺された三兄妹は、流れ星に仇討ちを誓う。14年後、互いのことだけを信じ、世間を敵視しながら生きる彼らの前に、犯人を突き止める最初で最後の機会が訪れる。三人で完璧に仕掛けはずの復讐計画。その最大の誤算は、妹の恋心だった。涙があふれる衝撃の真相。著者会心の新たな代表作。

こんな時・こんな人向け:泣きたいとき。しっかりしたミステリーを読みたい方。

TBSでドラマ化もされている本作品。ドラマを見ていない方は必読!ミステリー要素たっぷりの読みごたえある一冊です。

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『陽気なギャングが地球を回す』/伊坂幸太郎/あらすじ・ネタバレ・感想

陽気なギャングが地球を回す
著者:伊坂幸太郎

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陽気なギャングシリーズは、1作目「陽気なギャングが地球を回す」、2作目「陽気なギャングの日常と襲撃」、3作目「陽気なギャングは三つ数えろ」の順に発売された、累計230万部を売り上げる人気シリーズです。できれば順番に読んで頂きたいですが、簡潔型なので問題なく読むことができると思います。

嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった…はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス。

引用:Amazonより

 

登場人物

成瀬(なるせ)  嘘発見器男。

響野(きょうの) 演説名人。

久遠(くおん)  天才スリ。瞬時に何でも掏る
雪子(ゆきこ)  体内時計女。時間をきっちり計る
祥子(しょうこ) 響野の妻。
慎一(しんいち) 雪子と地道の息子
地道(じみち)  雪子の元恋人。借金を抱えている。
神崎(かんざき) 地道を脅す借金貸し。
田中       合鍵作りや盗聴の職人。
タダシ      成瀬の息子。自閉症

あらすじ・ネタバレ

【起】
成瀬・響野、久遠、雪子はある日銀行を襲う。誰も傷つけず5分きっかりで無事4千万円を盗むが、雪子の運転する車にて逃走の途中、巷で噂されている現金輸送車強盗団(以降:輸送強盗)の車が体当たりしてきて車ごと4千万円を奪われてしまう

【承】
久遠は輸送強盗の財布を盗んでおり、その中には”林”の免許証があった。輸送強盗を探すべく成瀬・雪子は林のアパートへ向かう。そこには背中を刺され殺害されている林がいた。同時刻、響野・久遠は慎一に友達の薫君を助けてほしいと依頼をされ、廃パチンコ店に到着。不良グループに暴行を受けていた薫君を救出するが、そこへ、謎の男X氏が拳銃を持って現れ「慎一から離れろ」と告げる。その時ちょうどパトカーのサイレンが聞こえ響野・久遠・謎の男X氏は解散(逃走)する。

【転】
久遠はX氏の携帯を掏っていたが、その携帯電話に成瀬から電話がかかってきた。(正確に言うと、成瀬が林のポケットに入っていた携帯の着信履歴にあった番号にかけた。)つまりX氏と林は繋がっていたということだ。さて、ここで成瀬が話を整理する「①林のアパート、パチンコ店でのできごと共通点は”雪子”であること。②輸送強盗団はあの日4千万円をもった車があの道所を通ることを知っていたこと。嘘発見器の能力を発揮して)③雪子の様子が最近おかしかったこと(慎一をかなり心配している)④謎の男X氏は雪子の元恋人で慎一の父・地道であること」

なぜあの日4千万円を奪われたかその真実は…雪子と地道が関係し、そして全ては神崎の計画であった。
―地道は雪子の元恋人だった。別れて数年たっていたが、ある日ばったり出くわしてしまう。地道は神崎から多額の借金をしていたが、雪子は自尊心から「それくらいのお金は用意できる」と言ってしまう。地道が金貸しの神崎にそれ(雪子が金を用意できること)を告げると、慎一に手を出されたくなかったら金を用意しろ、と地道は脅される雪子は慎一を守るため銀行強盗の計画を神崎にバレることを覚悟して地道に話す。そして、あの日4千万は奪われてしまったのだった。ちなみに林は輸送強盗の運転手で、4千万円を奪った後は用済みになり神崎に殺害されていた。そして廃パチンコ店に現れた地道は慎一を見守るためだった―
【結】
成瀬は、地道を仲間に入れ再度銀行強盗をする計画を立てる。しかしそれは神崎をおびき出す罠で、本当は銀行強盗をする予定はなかった。嘘の銀行強盗日当日、まんまと神崎はやってくる。神崎を外からでないと空かない車に閉じ込め、警察に通報した(トランクに響野・久遠が林の死体を移動させておいたので、神崎は殺人の罪で逮捕される)

―――おわり―――

 

感想


あらすじで書いてしまうと、なんてそっけないのだろう!!!と驚きました。こんな簡単に語れる小説ではありません!!!!伏線がたっぷりあって読み応えがある小説です!

伊坂さんの作品は相変わらず、登場人物が最高です…嘘が見抜けるだけでなく、頭の回転が速くていつでも冷静な成瀬、ぺらぺらいつまでもずっと喋れる、目立ちたがり屋の響、動物大好きスリの天才久遠(作中の「カバと人間を一緒にするなんて!」というセリフはカバのほうが人間より上だと思っている)、クールでかっこいい雪子、勇気のある慎一郎(ほかのギャングシリーズでも活躍)、響野となぜか結婚してしまうユーモアたっぷり祥子などなど。タダシも成瀬の元妻も、田中もみんなみんな大好きです。そして、登場人物たちの掛け合いには思わずクスっと笑ってしまいますので、電車で読むならマスクのご準備を!1作目を読んだら、絶対に2・3作目を読みたくなる中毒性ある作品です…。
あと、響野が好きな方は、似たキャラ(陣内さん)が活躍する「チルドレン」、「サブマリン」も是非読んでみてください!!!!!

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映像化

2006年には映画化されております!見たことはありませんが、キャストを見た感じだと、雰囲気あっているな~と感じました!

成瀬(大沢たかお

響野(佐藤浩市

雪子(鈴木京香

久遠(松田翔太

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『代償』/伊岡瞬/あらすじ・ネタバレ・感想

『代償』

著者:伊岡 瞬

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2016年啓文堂書店文化大賞ほか、全国の書店で続々1位となる、衝撃と断罪のサスペンスミステリーです。

ーーー内容(「BOOK」データベースより)ーーー

平凡な家庭の小学生・圭輔は、ある事故をきっかけに遠縁の同級生・達也と暮らすことになり、一転、不幸な境遇に陥る。寿人という友人を得て苦境を脱し、長じて弁護士となった圭輔に、収監された達也から弁護依頼が舞い込んだ“私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。かつての友情に免じて、私の弁護をしていただけないでしょうか”。裁判を弄ぶ達也、追いつめられた圭輔。事件を調べ始めた寿人は、証言の意外な綻びを見つけ、巧妙に仕組まれた罠をときほどいてゆくが―。

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●登場人物

    奥山圭輔:小学生の時火事で両親を亡くす。現在は弁護士。

    安藤(旧:浅沼)達也:人の心を支配する天才で小学生の頃から悪質な犯罪の首謀者。

 諸田寿人:中学生時代からの親友。ジャーナリスト

    安藤(旧:浅沼)道子:達也の母。財産目当てで圭輔を引き取る。

 浅沼秀秋:道子の夫で達也の父。ある日失踪する。

    牛島肇:寿人の叔父

 牛島美佐緒:肇の妻

 木崎美果:中学生の圭介が秘かに恋心を抱いていた

 本間保光:強盗致死事件の被害者

 本間寿々香:保光の妻

 白石真琴:白石事務所で働く圭輔の先輩弁護士

 

ーーーあらすじ・ネタバレーーー

【起】 (第一部)

小学生・圭輔は両親と幸せな生活を送っていた。そこへ、遠縁の道子とその子供である達也が引っ越してくる。道子は圭輔の両親にお金をたかり、圭輔と同い年である達也を預けるようになるが、達也は筋金入りのワルで、仲間と同級生の女の子の服を脱がせたり、ネズミの毒殺、喫煙等の常習犯だった。また、達也が出入りするようになってから、圭輔の家では、お金や母の下着、サバイバルナイフが無くなるようになり、不審に思った家族は道子・達也と距離を置く。しかし、ある日道子が大阪出張であると言い、やむなく達也を一週間預かることに。達也がいる間圭輔は常に気を張ってるが、取り返しのつかない事件は起きる。その日、達也が両親へカレーライスを作ることを提案し、そのカレーを食べた両親は強い眠気を訴えベッドルームにて眠りについてしまう。その夜、煙草の不始末(ソファから燃え広がっていた)が招いた火事が発生し両親は亡くなってしまう。それから圭輔は道子に引き取られるが、道子は父の保険金や燃えた家にあった金庫のお金を奪い、圭輔にはおこずかいの一銭も与えず奴隷のように約3年を過ごします。奴隷のような中学生時代だが、救いは諸田寿人(親友)と、木崎美果(恋心を抱く)がいたことだった。3人で下校をしたり、時には遊んだり、寿人の家で本を読んだりと幸せな一時も存在した。しかし美果は中学1年生の夏に突然転校してしまい、圭介は達也を疑う。地獄の日々を送る圭輔ですが、中学3年生になった時、寿人の叔父である牛島肇が圭介を道子のもとから救い出し、牛島夫妻の家で暮らすようになった。

【承】(第二部)

圭輔は白石法律事務所で働く弁護士になっていた。そこへ強盗致死の被告人となっていた達也から、”自分は無罪だ。弁護してほしい”との手紙が届く。当初は突っぱねますが、「火事の日、煙草に火をつけたことを知っている」と達也に告げられ圭輔の心は支配されてしまう。実は、あの火事のあった日、圭輔は煙草に火をつけていた。達也から”たばこも吸えないのか”と揶揄され、煙草の火はすぐに消すが、意地で一吸していたのだった。しかし、煙草の火種がソファに落ちた可能性は0ではなく、圭輔はその呪縛から逃れることはできずにいた。弁護人を受け入れることになるが、周りの目撃情報や証言などから達也の無罪は厳しいものだった。そこへ佃紗弓という達也に惚れている女が現れ、強盗当日は達也と一緒にいたと主張し、法廷でそう証言すると話す。 ある日、寿人と繋がりがある萱沼というやり手ライターが、達也に興味を抱いたということで圭介は萱沼と話をすることになり、そこで衝撃の話を聞くことになる。1つ目、火事の後、司法解剖が行われた母の遺体の中に情交の跡があり、体内に入っていた精子がO型であった。睡眠薬の影響で眠っていた父親の線は消える為、達也以外考えられないということ。2つ目は達也が関わっている人間の死亡があまりに多いということ。心を揺さぶられる圭輔ですが、裁判の日は容赦なくやってくる。

 【転】

裁判の日になり、検察側の証人で現れたのはなんと佃紗弓だった。紗弓は「事件当日達也と一緒にいたことにして欲しい」と圭介に頼まれたと証言し、法廷は荒れます。その後、達也への再尋問が行われますが、達也は「紗弓とは一緒にいなかった。圭介から虚偽のアリバイを語るよう言われた」と証言します。また、事件当日は母道子と一緒におり有料サイトで生配信をしながら性行為に及んでいたと付けたし、アリバイが成立してしまう。実は佃紗弓は実は木崎美果の妹で、「圭輔が美果を先輩に売って集団凌辱された。それを達也が助けに行った」と達也から聞かされており、それを信じていたのだった。また、美果は事件の後強いPTSDを引き起こし、木崎家は崩壊していったと続けた。圭輔は必死に否定するが、マインドコントロールされている紗弓の心を変えることはできなかった。虚偽の証言をするよう助言をした圭輔は私選弁護士から外された。

圭輔と寿人は、『なぜ達也は逮捕されて4カ月たった今更アリバイの証拠を出してきたのか、今まで出せない理由が何かあったのではないか』と考える。「圭ちゃん、あいつの本当の目的を探さないか。達也がすぐ近くにいた人間の死は、調べただけで7人いるんだ。財産を取られただけの圭ちゃんは、幸運なんじゃないか。」そう言った寿人の言葉に、圭輔は『あの日煙草の火をつけた』ことを寿人へ話し、達也の悪事を暴く覚悟をします。寿人、圭輔は事件の真犯人を調査し始め、昔道子の家によく来ていた道子の不倫相手・門田芳男が浮上する。門田は既に失踪しており、門田の元妻に話を聞きに行くと、そこで骨壺(門田の母のもの)を処理してほしいと言われる。骨壺を調べるとテープが入っており、道子が秀秋を殺害した証拠となる会話が残っていた。また、寿人は浅沼秀秋の死体を発見する。証拠はそろった。

【結】

北池袋の中華料理屋に、圭輔・寿人・道子・達也・紗弓が集まる。そこで圭輔と寿人は話し始める。”門田は道子を脅していた。「門田が達也のふりをして本間を襲い、金を奪う、そして海外に逃げ病死(門田は病気だった)か自殺するまでの期間、達也が身代わりで警察に捕まっておいてほしい」と。さもなければテープを公開すると。しかし門田は海外で死ぬことはできず、のこのこ帰ってきた。それも道子のもとへ。道子は脅される生活を危惧し門田を軟禁しパラコートで毒殺した。”それが表向きのストーリーで、門田の脅しと見えていたことは実はすべて達也の企みだった。道子に門田を殺させ、道子を警察に売る。真実は『達也が、門田へ強盗をしてお金が入ることをそそのかし、道子には門田が帰ってきたら、殺害道具を揃えるから殺害するよう指示をした』ことだった。そうすることで、小学生の頃から肉体関係を迫ってきた憎き継母道子と昔の犯罪を知って金をせびってくる門田を同時に排除することができるのだった。それでも達也は白を切るが、紗弓がある録音音声を流す(達也が「道子は近いうちにいなくなる」と話す声)それに腹を立て道子は達也に毒の入った酒を飲ませ、達也は病院へ運ばれ、数日間生死の境を彷徨うが一命を取り留める。警察では道子は秀秋・門田以外の殺害も匂わせており、おそらく死刑が確定する。しかし達也を断罪できるかどうかは不確定。道子と紗弓の証言を併せ有罪へ持っていけるよう圭輔は戦うことを決意するのだった。

ーーー終了ーーー

 

●感想

もう、達也と道子がくずくずごみくずくずくず・・・!この本の10分の9はイライラしてました!(笑)達也はもっと無様にみじめになってほしかった!(笑)断罪できたか書かれていませんでしたが、死刑宣告されててほしかったな~。それにしても…圭輔のセリフ”彼は他人の人格を汚すこと、破壊することに喜びを見出すのです。”と言ったはぞくぞくしました。この小説の救いは寿人です。本当にいてよかった…。寿人の推進力と勇気がこの小説を読み進める原動力になります。終始暗い話なので、圭輔は白石真琴と幸せになったことを信じたいです!!!続きがとにかく気になる本なので一気読み間違いなしです。私は読んでよかったと思う一冊ですが、人によっては意見がわかれるかもしれません。。。暗い話が嫌いな方へはお勧めしません。

 

●映像化

主演小栗旬酸で、Huluオリジナルドラマが放送されていました!

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『彼女たちの場合は』/江國香織/あらすじ・ネタバレ・感想/2人が訪れた場所

『彼女たちの場合は』

著者:江國香織

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著者江國香織さんは2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞など数々の賞を受賞されている作家さんです。『冷静と情熱の間』や『東京タワー』など映画化されている作品も数多くあります。『彼女たちの場合は』は江國さん2年ぶりの長編小説になります。

―――内容(「BOOK」データベースより)―――

「これは家出ではないので心配しないでね」

14歳と17歳。ニューヨークの郊外に住むいとこ同士の礼那と逸佳は、ある秋の日、二人きりで“アメリカを見る”旅に出た。日本の高校を自主退学した逸佳は“ノー(いやだ)”ばかりの人生で、“見る”ことだけが唯一“イエス”だったから。ボストン、メインビーチズ、マンチェスタークリーヴランド……長距離バスやアムトラックを乗り継ぎ、二人の旅は続いてゆく――。美しい風景と愛すべき人々、そして「あの日の自分」に出逢える小説。

―――――――――――――――――――――――

【登場人物】

三浦逸佳(いつか) …主人公 

木坂礼那(れいな) …主人公 

木坂理生那(りおな)…礼那の母

木坂潤(うるう)  …礼那の父

木坂譲(ゆずる)  …礼那の弟

三浦新太郎(しんたろう)…礼那の父/理生那の兄

その他旅先で出会う登場人物が大勢

【あらすじ】

ニューヨークに住む逸佳と礼那の2人の女の子がヒッチハイクをしたり、列車や長距離バスを乗り継いで旅をする物語です。陸路に拘る理由は、「行きたい場所も行きたくない場所もなく、特にやりたいことがあるわけでもなくて”ノー”だけがある逸佳にとって”見る”ことは唯一”イエス”なこと」であり、陸路で沢山の景色をみるため。行く先々で、素晴らしい景色に感動したり、美味しいものを食べたり、事件が起こったり、働いたり…。個性的な人との出会い・別れを繰り返しながら物語は進んでいきます。

ーー以下訪れた場所(ネタバレ)ーー

「出発地」ニューヨーク州 マンハッタン

ポート オーソリティ バスターミナル/メイン州に向かうため北上することを決める

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マサチューセッツ州 ボストン

塩辛いクラムチャウダーを飲む/オクラハマ州から来た3人組に合う/ホエールウォッチングをする/ 列車移動中、編み物男(クリス)に出会う(P39トイレに行くため荷物を見てもらったことがきっかけ)

メイン州 ポートランド

メインビーチズに行く/生涯ベストワンスープ(魚のスープ)を飲む/アンジェラ事件発生

メイン州 キタリー

「WE WAIT TO GO KITTERY」を掲げヒッチハイク/アウトレットへ行く/ピスカタクワ川を渡りニューハンプシャー州

ニューハンプシャー州 マンチェスター 

 ファーストフード店でクリスと再会/レッドアローでバッファローチキンを食べる/サバデイ・フォールズに行く/カヴァード・ブリッジに行く/かなり揺れる機関車(コグ式登山列車に乗る)

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オハイオ州 クリーヴランド

バスターミナルで母に電話を掛ける/ミセス・ジョアンナ・パターソンに出会う/れいながグルマンを追う/数日間ミセス・パターソン宅でグルマンの面倒を見る/ミュージシャンのヘイリーと出会う/クレジットカードが止められる

ケンタッキー州 ルイヴィル (通過するだけ)

テネシー州 ナッシュビル

ヘンリーのアパートに住む/いつかが昼は”ポケッツ”、夜は”サード・フィルド”で働く/れいながハンナと友達になる/クリスから電話がある(いつかは喜ぶが恋心ではない)

ミズリー州 セントルイス

ゲートウェイ・アーチに行く

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ミズリー州 カンザスシティ

年越し

カンザス州 ウィタチ

街をぐるぐる歩く/オールド・カウタウン・ミュージアムに行く

アイオワ州 デイモン ⇒ アーカンソー州 リトルロック (12時間の夜行バス)

オレンジ男(ケニー)に出会う/ミセスキーソンのホテルに泊まる/れいなの誕生日を祝う(シュリンプ・アンド・グリッツを食べる)

アーカンソー州 リトルロック ⇒ ニューメキシコ州 アルバカー

ケニーのキャンピングカーで移動する

ダンプステーションに行く/アイオライト(紫色の石をもらう)

テキサス州⇒オクラハマ州⇒ミズリ州⇒イノリイ州 シカゴ

バスを乗り継ぎながら移動/いつかが風邪をひく/いつかは一人で動物園に行く/ニューヨークまでの長時間バスに備えた買い物

 終わり

【感想】

私もいつかとれいなと一緒に三人で旅をしました。そんな気分で読んでいました。気軽に旅に出られる年齢ではなくなっている自分が次はどこに行くのだろうとわくわくしながら読み進めていました。一回目が読み終わったあと、訪れた後を調べながら再読しました。すべてが”ノー”であるいつか。その気持ちは誰しもが心の中に抱えているのではないかと思ってしまいます。ある日突然すべてが嫌になることがあるので…社会人として踏ん張りますが…。あらすじには書けませんでしたが、理生那や潤等の親のパートも心情が巧妙に描かれていてぐっときます。子供を心配する親心、子供を応援する親心、相反する夫婦の気持ちを感じ、潤との別れを悟る理生那。みんな自由に生きてほしい!とすべての登場人物を応援したくなりました。あー、いつかとれいなが訪れた場所を実際に行ってみたい…!

 
【好きな言葉・名言】

「P13」これまでの人生で逸佳が”ノー”だったものは、たとえば学校だし、恋愛だし、女の子たちだった。太ることも、友達としゃべることも、作文や日記を書くこともノーだっし、友達の家に泊まりに行くことも、友達が家に泊まりに来ることも、ロックコンサートでみんなが一緒に盛り上がることもノーだった。長電話も、即レスが義務みたいなLINEもたばこも、化粧も、写真を撮られることも、愛想笑いをするのを見るのもノーだった。数え上げたらきりのないそれらノーの中をいつかはかろうじて生きてきた
P73 「大人はみんな『嘘をついちゃいけません』って子供に言うでしょ。それがなんでなのか、初めて分かった。嘘をつくと淋しくなるからだよ。」

 P80  「また日記つけているの?」「つけないとなくなっちゃう気がするから」「なくならないよ。事実はなくならない」事実はなくならない。礼那には本当かどうかわからなかった。もしなくならないのだとしたら、それらは日記以外の一体どこに、あり続けられるというのだろう。

 

 

 

 

『秘密』/東野 圭吾/あらすじ・ネタバレ・感想

『秘密』

著者:東野圭吾

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1998年度ベストミステリーとして話題となり、広末涼子主演で映画化、志田未来主演で連続ドラマ化もされた東野圭吾出世作。累計200万部突破の伝説のベストセラー。

登場人物が少ないので、非常に読みやすいです。普段あまり小説を読まない方にもお勧めしています!

ーーー内容(「BOOK」データベースより)ーーー

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。

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大学生の時に読んだ小説ですが、今でもふと読み返したりします。設定としてはあり得ないことですが、平介の心情がリアルに描かれていていて何回読んでも胸が締め付けられます。

あらすじ・ネタバレ

【起】

39歳の杉田平介は妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美と暮らしていました。ある日、長野の実家に行く妻と娘を乗せたスキーバスが崖から転落してしまい、病院に搬送されるも妻は死亡。娘は一命を取り止め意識を取り戻しますが、娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻でした。

【承】

外見は小学生ながら今までどおり家事をこなす妻・直子は「藻奈美の魂が戻ってきた時に、より良い人生を歩んで欲しい」と猛勉強を開始。私立中学を受験をし、その後は医学部を目指し、見事難関高校を合格します。そして時は流れ、年頃の女性になった藻奈美(直子)に思いを寄せる部活動の先輩・相馬が現れ、平介は嫉妬心を隠しきれなくなります。やがて盗聴セットを仕掛けて直子の電話を盗み聞きしたり、彼女宛の郵便物を全てチェックするなど、その行動はエスカレートしていきます。直子は平介の葛藤に気付き、性行為をしようと誘いますが、体は娘である為、平介は受け入れることができませんでした。

【転】

家庭関係が悪化する中、被害者の会で中で平介は、バスの運転手(幸広)の妻・梶川征子と知り合い、征子は遺族に謝罪した上で、夫の幸広は過重労働をしていたと告げます。過重労働は会社からの命令ではなく、幸広の意志であり、過重労働をしたお金は元妻・根岸典子に送っていることが判明します。幸広と根岸典子には息子・文也がおり、その学費を送っていたのでした。しかし文也は実は幸広の子供ではなく、幸広もそのことを知っていました。それでも父親であろうとした幸広の覚悟を知り、平介はある決意をします。藻奈美を「妻ではなく、娘として接すること」とし、呼び方を直子から藻奈美に変えます。そしてその後、少しづつ藻奈美の魂が目を覚ますようになります。そしてついに直子の魂は消えてしまうのです。平介は直子の魂が消えたことに悲しみつつも藻奈美が目覚めたことに喜びを感じ、家族関係はよくなっていきます。

【結】

数年後、藻奈美は相馬と結婚します。結婚式当日、親戚から藻奈美の結婚指輪は直子の結婚指輪を作り直したことを聞かされます。この結婚指輪は平介と直子がテディベアに隠したものであり、2人だけしか知らないことだったのです。藻奈美がなぜ直子の結婚指輪があるところを知っていたのか、平介はある仮説にたどり着きます。直子は、平介の葛藤する姿を見て、これからは一生藻奈美として生きていこうと思ったのではないか…と。ラストのシーンで、平介は相馬に「2回殴らせてくれ」とお願いをします。一回は藻奈美を嫁に出すこと、そしてもう一回は直子を嫁に出すこと…。

【感想】

本当のとことは分からない・・・として小説は終わりましたが、もし本当に直子が藻奈美として生きる決意をしたのであれば…平介、直子の気持ちを考えると涙が止まりません。記事を書いていたらまた読み返したくなってきました。何度読んでも泣ける小説です。

【映像化】

ドラマ

●杉田藻奈美/直子 - 志田未来

●杉田平介 - 佐々木蔵之介

 

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映画

●杉田藻奈美/直子 -広末涼子
●杉田平介 -小林薫

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『任侠書房』(任侠シリーズ)/今野敏

任侠書房 / 任侠学園 / 任侠病院 / 任侠浴場

著者:今野敏

阿岐本組のナンバー2、日村誠司を主人公とする任侠シリーズです。シリーズは一貫して、経営危機に陥った会社やら学校を再建する物語で、世の為人の為、「素人には手を出さない」がモットーの秋元組が活躍します。

一行POP:血が流れないコミカルなヤクザ物語。明日から学校・会社に行きたくなる!

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---内容(「BOOK」データベースより)---

『任侠書房』

日村誠司が代貸を務める阿岐本組は、今時珍しく任侠道をわきまえたヤクザ。その阿岐本組長が、兄弟分の組から倒産寸前の出版社経営を引き受けることになった。舞い上がる組長に半ば呆れながら問題の梅之木書房に出向く日村。そこにはひと癖もふた癖もある編集者たちが…。マル暴の刑事も絡んで、トラブルに次ぐトラブル。頭を抱える日村と梅之木書房の運命は?「任侠」シリーズ第一弾(『とせい』を改題)。

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 【シリーズの順番】

第一弾『任侠書房』、第二弾『任侠学園』、第三弾『任侠病院』、第四弾『任侠浴場』の順番で出版されております。若干繋がりがあるので第一弾『任侠書房』から読み進めることをお勧めします!

『隠蔽捜査』がすきなので第一弾を読み始めましたが、おもしろくてシリーズ読破してしまいました…。(優劣付けにくいですが、任侠学園が一番面白いと感じました!)

 

 【登場人物】

下記6名が阿岐本組を構成してますが、どの人物のことも好きになる、人情味あふれたヤクザたちです。それぞれに味があって、強くて優しい!

●阿岐本 雄蔵:組長

 赤ら顔でスキンヘッドをした昔気質のやくざの組長。文化的な事業に目がないところが困りもの。何が起こっても動じない、肝が据わったカッコいい組長です。

●日村 誠二:代貸(ナンバー2)

 貧乏な家庭に生まれ育ったが、阿岐本に出会い、一本筋の通ったヤクザとなった。組長に敬意を払い、部下を愛する漢。

●三橋 健一:組員

 喧嘩がめっぽう強い。若い衆を仕切る

●二宮 稔:組員

 元暴走族。やんちゃな過去を持つが今ではかわいい部下

●市村 徹:組員

 元引きこもりのハッカーで逮捕歴あり。愛想はないが頭が良く実は組思い

●志村 真吉:組員

 番下っ端。女をたらし込んで情報を得ることに長ける。女好きで、なぜか女が寄ってくる天然モテ男。

 

今野敏さんといえば、有名な「隠蔽捜査」シリーズの著者ですが、こんなコミカルな作品も書けるのか!と終始感動してました。

ヤクザの物語なのに、ほぼ血が流れない読みやすい小説です。刺激的なアクションシーンを求めている方向けではありません!

掃除欲と仕事へのやる気が沸いてくる一冊です。

 

【映像化】

2019年には西島秀俊主演で「任侠学園」が映画化されております!組長、日村、生徒はイメージ通りですね~!他はちょっとイメージと違う…志村 真吉は千葉雄大かな~

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