きままに図書館

年間120冊ほど本を読む”本のむし”です。心に染みた本たちの備忘録&ご紹介をしていきたいと思います。ネタバレありますのでご注意願います…!

『代償』/伊岡瞬/あらすじ・ネタバレ・感想

『代償』

著者:伊岡 瞬

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2016年啓文堂書店文化大賞ほか、全国の書店で続々1位となる、衝撃と断罪のサスペンスミステリーです。

ーーー内容(「BOOK」データベースより)ーーー

平凡な家庭の小学生・圭輔は、ある事故をきっかけに遠縁の同級生・達也と暮らすことになり、一転、不幸な境遇に陥る。寿人という友人を得て苦境を脱し、長じて弁護士となった圭輔に、収監された達也から弁護依頼が舞い込んだ“私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。かつての友情に免じて、私の弁護をしていただけないでしょうか”。裁判を弄ぶ達也、追いつめられた圭輔。事件を調べ始めた寿人は、証言の意外な綻びを見つけ、巧妙に仕組まれた罠をときほどいてゆくが―。

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●登場人物

    奥山圭輔:小学生の時火事で両親を亡くす。現在は弁護士。

    安藤(旧:浅沼)達也:人の心を支配する天才で小学生の頃から悪質な犯罪の首謀者。

 諸田寿人:中学生時代からの親友。ジャーナリスト

    安藤(旧:浅沼)道子:達也の母。財産目当てで圭輔を引き取る。

 浅沼秀秋:道子の夫で達也の父。ある日失踪する。

    牛島肇:寿人の叔父

 牛島美佐緒:肇の妻

 木崎美果:中学生の圭介が秘かに恋心を抱いていた

 本間保光:強盗致死事件の被害者

 本間寿々香:保光の妻

 白石真琴:白石事務所で働く圭輔の先輩弁護士

 

ーーーあらすじ・ネタバレーーー

【起】 (第一部)

小学生・圭輔は両親と幸せな生活を送っていた。そこへ、遠縁の道子とその子供である達也が引っ越してくる。道子は圭輔の両親にお金をたかり、圭輔と同い年である達也を預けるようになるが、達也は筋金入りのワルで、仲間と同級生の女の子の服を脱がせたり、ネズミの毒殺、喫煙等の常習犯だった。また、達也が出入りするようになってから、圭輔の家では、お金や母の下着、サバイバルナイフが無くなるようになり、不審に思った家族は道子・達也と距離を置く。しかし、ある日道子が大阪出張であると言い、やむなく達也を一週間預かることに。達也がいる間圭輔は常に気を張ってるが、取り返しのつかない事件は起きる。その日、達也が両親へカレーライスを作ることを提案し、そのカレーを食べた両親は強い眠気を訴えベッドルームにて眠りについてしまう。その夜、煙草の不始末(ソファから燃え広がっていた)が招いた火事が発生し両親は亡くなってしまう。それから圭輔は道子に引き取られるが、道子は父の保険金や燃えた家にあった金庫のお金を奪い、圭輔にはおこずかいの一銭も与えず奴隷のように約3年を過ごします。奴隷のような中学生時代だが、救いは諸田寿人(親友)と、木崎美果(恋心を抱く)がいたことだった。3人で下校をしたり、時には遊んだり、寿人の家で本を読んだりと幸せな一時も存在した。しかし美果は中学1年生の夏に突然転校してしまい、圭介は達也を疑う。地獄の日々を送る圭輔ですが、中学3年生になった時、寿人の叔父である牛島肇が圭介を道子のもとから救い出し、牛島夫妻の家で暮らすようになった。

【承】(第二部)

圭輔は白石法律事務所で働く弁護士になっていた。そこへ強盗致死の被告人となっていた達也から、”自分は無罪だ。弁護してほしい”との手紙が届く。当初は突っぱねますが、「火事の日、煙草に火をつけたことを知っている」と達也に告げられ圭輔の心は支配されてしまう。実は、あの火事のあった日、圭輔は煙草に火をつけていた。達也から”たばこも吸えないのか”と揶揄され、煙草の火はすぐに消すが、意地で一吸していたのだった。しかし、煙草の火種がソファに落ちた可能性は0ではなく、圭輔はその呪縛から逃れることはできずにいた。弁護人を受け入れることになるが、周りの目撃情報や証言などから達也の無罪は厳しいものだった。そこへ佃紗弓という達也に惚れている女が現れ、強盗当日は達也と一緒にいたと主張し、法廷でそう証言すると話す。 ある日、寿人と繋がりがある萱沼というやり手ライターが、達也に興味を抱いたということで圭介は萱沼と話をすることになり、そこで衝撃の話を聞くことになる。1つ目、火事の後、司法解剖が行われた母の遺体の中に情交の跡があり、体内に入っていた精子がO型であった。睡眠薬の影響で眠っていた父親の線は消える為、達也以外考えられないということ。2つ目は達也が関わっている人間の死亡があまりに多いということ。心を揺さぶられる圭輔ですが、裁判の日は容赦なくやってくる。

 【転】

裁判の日になり、検察側の証人で現れたのはなんと佃紗弓だった。紗弓は「事件当日達也と一緒にいたことにして欲しい」と圭介に頼まれたと証言し、法廷は荒れます。その後、達也への再尋問が行われますが、達也は「紗弓とは一緒にいなかった。圭介から虚偽のアリバイを語るよう言われた」と証言します。また、事件当日は母道子と一緒におり有料サイトで生配信をしながら性行為に及んでいたと付けたし、アリバイが成立してしまう。実は佃紗弓は実は木崎美果の妹で、「圭輔が美果を先輩に売って集団凌辱された。それを達也が助けに行った」と達也から聞かされており、それを信じていたのだった。また、美果は事件の後強いPTSDを引き起こし、木崎家は崩壊していったと続けた。圭輔は必死に否定するが、マインドコントロールされている紗弓の心を変えることはできなかった。虚偽の証言をするよう助言をした圭輔は私選弁護士から外された。

圭輔と寿人は、『なぜ達也は逮捕されて4カ月たった今更アリバイの証拠を出してきたのか、今まで出せない理由が何かあったのではないか』と考える。「圭ちゃん、あいつの本当の目的を探さないか。達也がすぐ近くにいた人間の死は、調べただけで7人いるんだ。財産を取られただけの圭ちゃんは、幸運なんじゃないか。」そう言った寿人の言葉に、圭輔は『あの日煙草の火をつけた』ことを寿人へ話し、達也の悪事を暴く覚悟をします。寿人、圭輔は事件の真犯人を調査し始め、昔道子の家によく来ていた道子の不倫相手・門田芳男が浮上する。門田は既に失踪しており、門田の元妻に話を聞きに行くと、そこで骨壺(門田の母のもの)を処理してほしいと言われる。骨壺を調べるとテープが入っており、道子が秀秋を殺害した証拠となる会話が残っていた。また、寿人は浅沼秀秋の死体を発見する。証拠はそろった。

【結】

北池袋の中華料理屋に、圭輔・寿人・道子・達也・紗弓が集まる。そこで圭輔と寿人は話し始める。”門田は道子を脅していた。「門田が達也のふりをして本間を襲い、金を奪う、そして海外に逃げ病死(門田は病気だった)か自殺するまでの期間、達也が身代わりで警察に捕まっておいてほしい」と。さもなければテープを公開すると。しかし門田は海外で死ぬことはできず、のこのこ帰ってきた。それも道子のもとへ。道子は脅される生活を危惧し門田を軟禁しパラコートで毒殺した。”それが表向きのストーリーで、門田の脅しと見えていたことは実はすべて達也の企みだった。道子に門田を殺させ、道子を警察に売る。真実は『達也が、門田へ強盗をしてお金が入ることをそそのかし、道子には門田が帰ってきたら、殺害道具を揃えるから殺害するよう指示をした』ことだった。そうすることで、小学生の頃から肉体関係を迫ってきた憎き継母道子と昔の犯罪を知って金をせびってくる門田を同時に排除することができるのだった。それでも達也は白を切るが、紗弓がある録音音声を流す(達也が「道子は近いうちにいなくなる」と話す声)それに腹を立て道子は達也に毒の入った酒を飲ませ、達也は病院へ運ばれ、数日間生死の境を彷徨うが一命を取り留める。警察では道子は秀秋・門田以外の殺害も匂わせており、おそらく死刑が確定する。しかし達也を断罪できるかどうかは不確定。道子と紗弓の証言を併せ有罪へ持っていけるよう圭輔は戦うことを決意するのだった。

ーーー終了ーーー

 

●感想

もう、達也と道子がくずくずごみくずくずくず・・・!この本の10分の9はイライラしてました!(笑)達也はもっと無様にみじめになってほしかった!(笑)断罪できたか書かれていませんでしたが、死刑宣告されててほしかったな~。それにしても…圭輔のセリフ”彼は他人の人格を汚すこと、破壊することに喜びを見出すのです。”と言ったはぞくぞくしました。この小説の救いは寿人です。本当にいてよかった…。寿人の推進力と勇気がこの小説を読み進める原動力になります。終始暗い話なので、圭輔は白石真琴と幸せになったことを信じたいです!!!続きがとにかく気になる本なので一気読み間違いなしです。私は読んでよかったと思う一冊ですが、人によっては意見がわかれるかもしれません。。。暗い話が嫌いな方へはお勧めしません。

 

●映像化

主演小栗旬酸で、Huluオリジナルドラマが放送されていました!

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