きままに図書館

年間120冊ほど本を読む”本のむし”です。心に染みた本たちの備忘録&ご紹介をしていきたいと思います。ネタバレありますのでご注意願います…!

『そして、バトンは渡された』家族構成の変遷・感想

瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』

 私には五人の父と母がいる。その全員を大好きだ。驚きのストーリーの本作品は2019年の本屋大賞受賞しています。瀬尾まいこさんは、2001年「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年単行本『卵の緒』で作家デビューします。その後2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を、2009年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞を受賞しています。

はらはら・ドキドキするような作品ではなく、ゆっくりと、穏やかな気持ちで読む小説です。家族とは何なのか、大切なものを再確認したくなります。

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森宮優子、十七歳。継父継母が変われば名字も変わる。だけどいつでも両親を愛し、愛されていた。この著者にしか描けない優しい物語。 「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 でも、全然不幸ではないのだ。」 身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作

感想

読む前に「4回も苗字が変わった少女の物語」ということを聞いていたので、悲しい物語で、涙涙なんだろうな~と思っていましたが、ぜんっぜん違いました。いつの時代を切り取っても優子は愛され大切にされていて温かい物語でした。第二章では早坂君と結婚を決意する優子ですが、早坂君なら大切にしてくれるよ、と私からも背中を押したくなりました。

”「早坂君が言うみたいに、気楽にいくわけないよ。生活って、人生ってもっと厳しいんだよ」「そうかな?俺と優子がいて、ピアノとおいしいものがあるんだよ。どう頑張っても、楽しいイメージしか浮かばないんだけど」”

という早坂君の言葉が大好きです。それに、空気を読めず、結婚を反対されている中「お父さん、口の横、カスタードクリームがついてます」と言ってしまう早坂君がとてもとても愛おしく感じます。優子はこれからも幸せに生きていくんだろうなと思いました…

正直、自分勝手な理由で、実父の手紙を渡さない梨花にすこし苛立ちを感じてしまいましたが…優子が幸せなら文句無しです!!!

血がつながってなくても「想い」があれば家族になれるのだと思いました。。。

家族構成の変遷・ネタバレ

【第一章】

① 生まれ~3歳

 実の父(水戸秀平)と実母

② 3歳~小学2年生

 水戸秀平との2人暮らし

3歳になる少し前に、実母は交通事故により他界。父と二人で暮らす。

③ 小学2年生~小学5年生

 水戸秀平と田中梨花(30)

小学6年生に上がる前、秀平はブラジルへ転勤の辞令が出る。秀平と梨花は離婚し、優子は友達と離れるのが嫌で、日本に残り梨花と暮らすことを決める。

④ 小学6年生

 田中梨花との2人暮らし

梨花はとても優しく優子想いだが、手元にあるお金を全てを使ってしまうような、計画性がない女性だった。近所に住む穏やかなおじいさんに野菜を貰ったりして暮らす。

⑤ 中学1年生~中学1年生

田中梨花(32)と泉ケ原茂雄(49)とお手伝いさん

優子が初めてものをねだった(ピアノが欲しい)ため、梨花はお金持ちの泉ケ原茂雄と結婚する。梨花によると「好きではないけど、嫌いではない人。優子の為に何とかピアノを手に入れたい」とのこと。何不自由ない家で、隙があればピアノを弾く生活。

⑥ 中学1年生~中学3年生

 泉ケ原茂雄とお手伝いさん

梨花は何もすることが無い生活に飽きてしまい出ていく。何とか優子を連れ出そうとするが、ピアノを弾きたい優子は泉ケ原のもとで暮らす。

⑦ 高校1年生~高校1年(2か月間)

 田中梨花と森宮

梨花は頭のいい森宮に惹かれ結婚するが、「探さないでください」と書置きを残し、2か月で出ていく。さらに数か月すると「好きな人ができたから、離婚してほしい」との連絡が入る。(実は梨花は病気を患っており、自分から身を引いたのだった)

⑧ 高校1年~結婚するまで

 森宮壮介との2人暮らし

 梨花は出ていくが経済的なことを考え森宮のもとで暮らす。森宮もまた優子を全面的に受け入れて優子を思い大切に育てる。

登場人物

●森宮優子

主人公。

●水戸秀平

本当の父。

●優子の生みの母

優子が3歳になる前に交通事故で他界。

●水戸梨花

2人目の母。実父の再婚相手。明るく元気だが、後先を考えないことがたまにキズ。

●泉ケ原茂雄

2人目の父。不動産会社の社長。穏やかで全てを包み込んでくれる。

●森宮壮介

3人目の父。梨花の再婚相手。東大卒だが少しずれている所がある。

●早瀬賢人

 優子の初恋の人。第2章で結婚する。かなりの天然。心を痺れさせるピアノを弾く。

 ●萌絵 

仲の良い同級生。いい子だが、一方的なところがある。

●佐伯史奈

仲の良い同級生。よく家に遊びに来る。

●浜坂

同じクラスの男の子。優子のことが好き。クラスのムードメーカー的存在。

●向井先生

担任の先生。上を後ろで一つ結びしている。程よい距離感を保ってくれる。

●矢橋と墨田

ギャル寄りの同級生。クラスのリーダー的存在。一時期優子をいじめる。