きままに図書館

年間120冊ほど本を読む”本のむし”です。心に染みた本たちの備忘録&ご紹介をしていきたいと思います。ネタバレありますのでご注意願います…!

三島由紀夫『命売ります』感想とネタバレ・登場人物

 『命売ります三島由紀夫

三島由紀夫は東大法科を経て大蔵省に入るりますが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立します。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』など、次々話題作を発表しました。本作品は、1968年、週刊誌『週刊プレイボーイ』に全21回連載され、同年に集英社より単行本刊行されました。2018年にはテレビドラマ化もされ、より多くの人に認知されることになった作品です。

f:id:harulibrary:20200305162340j:plain

あらすじ(筑摩書房より)

自殺に失敗し、「命売ります。お好きな目的にお使い下さい」という突飛な広告を出した男のもとに、現われたのは?

 

感想

小説好きなら三島由紀夫を読むべきだ…とお告げがあったので読んでみましたが、おもしろかったです!なんとなく、星新一さんのショートショートに出てきそうだな~と感じました。

他にも『午後の曳航』、『金閣寺』等も読みましたが、『命売ります』が一番好きでした(一番読みやすいからかも…)。ただ、かなり古い作品だからなのか、三島さんの作品だからか、登場人物の心情が常人には理解できない部分も出てくるので、「ん?」と思うことも多々ありました。(笑) 

それでも、魅惑的なタイトルと、ストーリーに惹きつけられ読み切ってしまいました。そして、「ここで終わるの!?」読み終わり後は思いましたが、三島由紀夫は命の大切さのようなものを伝えたかったのかもしれません…

登場人物

●山田羽仁男

主人公。コピーライター。

 ●老人

一人目の依頼人

●岸るり子

23歳。老人の3人目の妻。かなりのオカルト好き。

三国人=ベレー帽の画家

るり子の不倫相手。

●図書館司書の女性

2人目の依頼者。

●外人

図書館司書から昆虫図鑑を購入。図書館司書からACSの人間と思われている。

井上薫

3人目の依頼者。高校生。

●薫の母

美しい吸血鬼。未亡人

●病室に来た男

4人目の依頼者。拳銃を所持。

●倉木玲子

 30前の女性。大地主のお嬢様。自分は梅毒だと思っている

●ACS

アジア・コンフィデンシャル・サーヴィス。密輸と殺人の組織。

内容・ネタバレ

【序章】

羽仁男は病院で目を覚まし、自殺に失敗したことに気付く。何だかカラッポな、素晴らしい自由な世界がひらけたように感じます。

何でもできるような気がした羽仁男は、三流新聞の求職欄に広告を出した。「命売ります。お好きな目的にお使いください。」自宅のドアには「ライフ・フォア・セイル 山田羽二生」と洒落たレタリングをした紙を貼った。

 

【第一の依頼】

依頼:妻のるり子が人をも平気で殺す三国人と不倫をしている為、るり子の愛人となり、三国人にるり子と共に殺されて欲しい。

るり子が大のオカルト好きということを知って、羽仁男はACSの人間と嘘をつき(正確にはるり子が勝手に勘違いをする)、るり子を抱くことに成功する。見事その現場を三国人に見つかる。羽仁男は「これで殺されることができる」と成功を悟るが、三国人は2人の性行為現場のデッサンをして満足してしまう。

実は、人を殺すような恐ろしい三国人ではなく、ただの絵かきだったのだ。男はるり子の気を惹くために悪い男を演じていたのだった。男は羽仁男を家に帰し、羽二生は命拾いしてしまう。

しかし、翌日るり子の死体が隅田川で発見された新聞が発行された。

 

【第二の依頼】

依頼:自殺したくなる薬の調合方法が書いている“日本甲虫図鑑”を外人に売ったが、その実験台になってほしい。

図書館司書は図書館で高値で販売されている昆虫図鑑を見つけ、外人に売ってしまう。司書はさらにお金を稼ごうとしてその薬の実験台として羽仁男も外人に売ろうとする。

当日芝浦の倉庫に連れていかれた羽仁男は、外人の前でその薬を飲む。薬は見事効果を発揮し、羽仁男は自分のこめかみに拳銃を突き付ける。

しかし意識が戻った時、死んでいたのは図書館司書だった。なんでも、羽仁男に惚れてしまった図書館司書が助けてしまったのだ。またまた羽仁男は命拾いしてしまう。

 

【第三の依頼】

依頼:母が吸血鬼で血を飲まないと死んでしまう。母に血を吸われて欲しい。

薫の家に行くと、そこにはきれいな吸血鬼(薫の母)がいた。羽仁男はそこに住み、喜んで血を吸われ続けた。

ある日、薫の母から「明日、羽仁男の頸動脈に噛み付き、羽仁男が死んだ後その後は焼死したい」と告げられる。

翌日、羽仁男は人生最後の散歩をしていると貧血で倒れ病院に運ばれてしまう。外を眺めると火事が起こっており、薫の母は不自然な焼死をする。またまた羽仁男は命拾いをしてしまう。

 

【第四の依頼】

依頼:B国の暗号解読キーを手に入れて欲しい

A国の最高機密電報の暗号解読のキーがB国に盗られてしまう。そこでA国大使館はB国大使館にある、B国の暗号解読キーを手に入れるように指示する。

B国の暗号キーは大使館の机の上にあるニンジンが関係していると推測され、A国のスパイが3人、B国大使館に侵入するも、ニンジンを食べて死んでしまう。

羽仁男はB国の本当の狙いは「暗号解読に”何か特別のにんじんがいる”と思いこませること」 だから、どこにでもある普通のニンジンで暗号解読できると結論付ける。

羽仁男はニンジンを食べてよく噛み吐き出した。そしてB国の電文に擦り付けると、ニンジンの成分で電文のキーが現れた。またまた

 

【最終章】

羽仁男が黒幕に追われ殺されかける章です。

 命拾いをした羽仁男は総額三百三万円を手にしており、「命、売ります」を休業して引っ越しをする。不動産で玲子と出会い、彼女が部屋の一間を月五万円・男性限定で貸していることを知る。玲子から住んで欲しいとお願いされたこともあり、羽仁男は玲子の家を間借りすることになる。

玲子は自分が梅毒で死んでしまうと信じ込みクスリを飲みラリっているのでした。羽仁男は彼女と交わり、玲子は自分を受け入れてくれたと思い込みます。しかし玲子は自分が死んでも羽仁男は死なないのだと絶望し、羽仁男を殺そうとします。

羽仁男は「命を売っていないのに殺されるのは嫌だ」と拒みます。そして玲子のもとから逃げ出すのでした。

逃げたしている途中、羽仁男は甲虫図鑑の外人3人と三国人に誘拐される。誘拐犯たちはACSの人間で、羽仁男が警察の人間だと確信していて殺そうとします。羽仁男は用意していた偽の爆弾(箱にストップウォッチを入れたもの)で脅し逃げ切ることができます。

警察に駆け込み助けてほしいと懇願しますが、警察はもちろんACSを知らず、住所もない羽仁男のことを信じず追い返すのでした。

 

ー終わりー

 

解説

羽仁男がやってきたことが、ACSにとっては警察と繋がっている人間だと思わせてしまったのでした。羽仁男は最初はいつ死んでもいいと思っていましたが、追われると急に生きたいと感じてしまうのでした。

【ACSの行動】

①「命売ります」の広告を出したことが、ACSにとっては、ACSをおびき寄せる罠だと思った。

②るり子はACSのことを知りすぎていたからもともと殺すつもりで、るり子が死んだら羽仁男が警察とコンタクトを取ると思った。

③るり子のことで警察とコンタクトを取らなかったので、第二の刺客図書館司書を用意した。しかし上手くいかなかった。

④吸血鬼に血を吸われる羽仁男を見て、「もしかすると警察のスパイではないかもしれない」と感じるようになった。

⑤しかしB国の暗号キーを解読したので、やはり警察と通ずるスパイだと思った。

 

映像化

  中村蒼主演で映像化されています。 

f:id:harulibrary:20200305200052j:plain