『彼女たちの場合は』/江國香織/あらすじ・ネタバレ・感想/2人が訪れた場所
『彼女たちの場合は』
著者:江國香織
著者江國香織さんは2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞など数々の賞を受賞されている作家さんです。『冷静と情熱の間』や『東京タワー』など映画化されている作品も数多くあります。『彼女たちの場合は』は江國さん2年ぶりの長編小説になります。
―――内容(「BOOK」データベースより)―――
「これは家出ではないので心配しないでね」
14歳と17歳。ニューヨークの郊外に住むいとこ同士の礼那と逸佳は、ある秋の日、二人きりで“アメリカを見る”旅に出た。日本の高校を自主退学した逸佳は“ノー(いやだ)”ばかりの人生で、“見る”ことだけが唯一“イエス”だったから。ボストン、メインビーチズ、マンチェスター、クリーヴランド……長距離バスやアムトラックを乗り継ぎ、二人の旅は続いてゆく――。美しい風景と愛すべき人々、そして「あの日の自分」に出逢える小説。
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【登場人物】
三浦逸佳(いつか) …主人公
木坂礼那(れいな) …主人公
木坂理生那(りおな)…礼那の母
木坂潤(うるう) …礼那の父
木坂譲(ゆずる) …礼那の弟
三浦新太郎(しんたろう)…礼那の父/理生那の兄
その他旅先で出会う登場人物が大勢
【あらすじ】
ニューヨークに住む逸佳と礼那の2人の女の子がヒッチハイクをしたり、列車や長距離バスを乗り継いで旅をする物語です。陸路に拘る理由は、「行きたい場所も行きたくない場所もなく、特にやりたいことがあるわけでもなくて”ノー”だけがある逸佳にとって”見る”ことは唯一”イエス”なこと」であり、陸路で沢山の景色をみるため。行く先々で、素晴らしい景色に感動したり、美味しいものを食べたり、事件が起こったり、働いたり…。個性的な人との出会い・別れを繰り返しながら物語は進んでいきます。
ーー以下訪れた場所(ネタバレ)ーー
「出発地」ニューヨーク州 マンハッタン
ポート オーソリティ バスターミナル/メイン州に向かうため北上することを決める
マサチューセッツ州 ボストン
塩辛いクラムチャウダーを飲む/オクラハマ州から来た3人組に合う/ホエールウォッチングをする/ 列車移動中、編み物男(クリス)に出会う(P39トイレに行くため荷物を見てもらったことがきっかけ)
メインビーチズに行く/生涯ベストワンスープ(魚のスープ)を飲む/アンジェラ事件発生
メイン州 キタリー
「WE WAIT TO GO KITTERY」を掲げヒッチハイク/アウトレットへ行く/ピスカタクワ川を渡りニューハンプシャー州へ
ファーストフード店でクリスと再会/レッドアローでバッファローチキンを食べる/サバデイ・フォールズに行く/カヴァード・ブリッジに行く/かなり揺れる機関車(コグ式登山列車に乗る)
バスターミナルで母に電話を掛ける/ミセス・ジョアンナ・パターソンに出会う/れいながグルマンを追う/数日間ミセス・パターソン宅でグルマンの面倒を見る/ミュージシャンのヘイリーと出会う/クレジットカードが止められる
ケンタッキー州 ルイヴィル (通過するだけ)
ヘンリーのアパートに住む/いつかが昼は”ポケッツ”、夜は”サード・フィルド”で働く/れいながハンナと友達になる/クリスから電話がある(いつかは喜ぶが恋心ではない)
ミズリー州 セントルイス
ゲートウェイ・アーチに行く
ミズリー州 カンザスシティ
年越し
カンザス州 ウィタチ
街をぐるぐる歩く/オールド・カウタウン・ミュージアムに行く
アイオワ州 デイモン ⇒ アーカンソー州 リトルロック (12時間の夜行バス)
オレンジ男(ケニー)に出会う/ミセスキーソンのホテルに泊まる/れいなの誕生日を祝う(シュリンプ・アンド・グリッツを食べる)
アーカンソー州 リトルロック ⇒ ニューメキシコ州 アルバカー
ケニーのキャンピングカーで移動する
ダンプステーションに行く/アイオライト(紫色の石をもらう)
テキサス州⇒オクラハマ州⇒ミズリ州⇒イノリイ州 シカゴ
バスを乗り継ぎながら移動/いつかが風邪をひく/いつかは一人で動物園に行く/ニューヨークまでの長時間バスに備えた買い物
終わり
【感想】
私もいつかとれいなと一緒に三人で旅をしました。そんな気分で読んでいました。気軽に旅に出られる年齢ではなくなっている自分が次はどこに行くのだろうとわくわくしながら読み進めていました。一回目が読み終わったあと、訪れた後を調べながら再読しました。すべてが”ノー”であるいつか。その気持ちは誰しもが心の中に抱えているのではないかと思ってしまいます。ある日突然すべてが嫌になることがあるので…社会人として踏ん張りますが…。あらすじには書けませんでしたが、理生那や潤等の親のパートも心情が巧妙に描かれていてぐっときます。子供を心配する親心、子供を応援する親心、相反する夫婦の気持ちを感じ、潤との別れを悟る理生那。みんな自由に生きてほしい!とすべての登場人物を応援したくなりました。あー、いつかとれいなが訪れた場所を実際に行ってみたい…!
【好きな言葉・名言】
「P13」これまでの人生で逸佳が”ノー”だったものは、たとえば学校だし、恋愛だし、女の子たちだった。太ることも、友達としゃべることも、作文や日記を書くこともノーだっし、友達の家に泊まりに行くことも、友達が家に泊まりに来ることも、ロックコンサートでみんなが一緒に盛り上がることもノーだった。長電話も、即レスが義務みたいなLINEもたばこも、化粧も、写真を撮られることも、愛想笑いをするのを見るのもノーだった。数え上げたらきりのないそれらノーの中をいつかはかろうじて生きてきた。
P73 「大人はみんな『嘘をついちゃいけません』って子供に言うでしょ。それがなんでなのか、初めて分かった。嘘をつくと淋しくなるからだよ。」
P80 「また日記つけているの?」「つけないとなくなっちゃう気がするから」「なくならないよ。事実はなくならない」事実はなくならない。礼那には本当かどうかわからなかった。もしなくならないのだとしたら、それらは日記以外の一体どこに、あり続けられるというのだろう。