『白夜行』感想・ネタバレ
感想・ネタバレ・伏線回収
発行部数200万部以上の超人気小説で、2006年には山田孝之・綾瀬はるかでドラマ化、2011年には高良健吾・堀北真希で映画化されています。
内容(「BOOK」データベースより)
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。
感想
初めて手に取ったとき、「分厚い!!」と感じましたが、無駄なページが一行もないと思うくらい密度の濃い小説です。分厚さで読んでいない方、ぜひ読んでみてください。一気読みですので!そして伏線がたっぷりあって何度も何度も読み返しました。
雪穂と亮司からの視点で書かれたところは1つもないのに、2人の「怒り」や「悲しさ」が伝わってくるような心にずっしりとくる作品でした。ラストシーンの雪穂が振り返らない場面、雪穂は何を考えていたのか…。たった一つの太陽を失った雪穂はどうしていくのか…。もし『幻夜』が『白夜行』の続きならば、亮司を失った雪穂はパワーアップした悪女になっているのですが、私は美冬と雪穂は違う人物だと信じたいです…。
『白夜行』のタイトルの意味を知った時、切なくいたたまれない気持ちになります…。
-本書より引用-
私の上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほどは明るくはないけれど、私には十分だった。私はその太陽よって、夜を昼と思って生きてくることができたの。わかるわね。私には最初から太陽なんかなかった。だから失う恐怖もないの。
主要登場人物
●亮司
●雪穂
●笹垣潤三:雪穂と亮司を追う警察官
ネタバレ
【第一章】小学生時代
●桐原洋介:亮司の父。質屋「キリハラ」社長
●桐原弥生子:亮司の母。
●松浦勇:質屋「キリハラ」店長。弥生子と男女の仲。
●西本文代:雪穂の母。未亡人。
●寺崎忠夫:文代に思いを寄せる自営業者(実は雪穂を買っていた?)
●田川敏夫:雪穂・文代が住む吉田ハイツを持つ田川不動産オーナー
【第二章】
【第三・四章】
【第五章】
【第六章】
大学生時代
●紺色のスーツ男:西口奈美江を追う男。奈美江から金を巻き上げる。
友彦の視点
亮司は大学には行っておらず、パソコンの専門課程を履修している友彦のノートで学んでいた。また、銀行キャッシュカードの複製を使い、知らない人の現金を引き下ろす犯罪をしていた。同時期、スーツ男がやってきて奈美恵の居場所を尋ねる。亮司と友彦は名古屋のビジネスマンションへ奈美江を逃がすが、数日後死体で発見される。(おそらく亮司が居場所を伝えた)
【第七章】
社会人
●高宮誠:雪穂と婚約中。
●三沢千都留:東西電装派遣。誠に想いを寄せる。
誠の視点
雪穂と高宮は婚約をしていたが、誠は千都留のことが気になってしまう。高宮が雪穂と結婚を決めた理由は過去に雪穂が誠との子を妊娠・中絶をしたことがきっかけだった。結婚式前日誠はある賭けに出る。千都留が止まると聞いているホテルに行き、彼女の気持ちを確かめることにしよう、と。しかし千都留がホテルに現れることはなく、誠は結婚を決意するのであった。実は、千都留は宿泊しようとしていたホテルで事件があったと警察に言われホテルを変更していた。その警察官は関西弁訛りがした(おそらく亮司)同時期、東西電装のコンピューターソフトがメモリスティック社から盗まれる。
【第八章】
弘恵:友彦と婚約中。
友彦の視点
亮司は友彦とともに『MUGEN』という店をオープンし、パソコンなどを販売していた。そこに松浦が現れ、亮司と何かを話している。その後、友彦と弘恵に結婚祝いとして切り絵と店をプレゼントし、姿を消す。
【第九章】
雪穂と誠が結婚して2年後
●田村紀子:南青山のお店で働く。雪穂の相棒。
誠の視点
雪穂が株を始めかなりの儲けが出る。証券会社にも足を運ぶようになり、夫婦仲が徐々に覚めていく。誠は子供を作ろうとするが、雪穂に拒まれてしまう。誠は雪穂を責め、株はやめると話す。しかしその後、雪穂は店を出したいと誠にお願いをする。株をやめた後、沈んでしまった雪穂を元気づけるため、誠は許可をするが、また夫婦仲は悪化してしまうのだった。そんなある日、雪穂は誠にゴルフスクールに誘う。ゴルフスクール当日雪穂は急用でいけなくなり、誠だけがスクールに行く。そこで千都留と再会し、誠は彼女の思いを抑えられなくなり不倫してしまう。数カ月がたったある日、雪穂と誠は大喧嘩をする。誠は腹が立ちお酒を飲み眠りにつくが、朝起きると顔を腫らした雪穂がいた。雪穂は酒に酔った誠に殴られたと言い、記憶が欠如していた誠とは、離婚することになる。
【第十章】
●今枝直巳:東京総合リサーチ勤務を退職し独立。
●笹塚康晴:雪穂と交際中。雪穂に心底惚れている。
●菅原絵里:今枝の友人
●元岡邦子:雪穂の中学時代の同級生。
今枝の視点
誠と千都留は結婚しており、子供を授かり幸せに暮らしている。今枝は笹塚一成から雪穂について調べてほしいと依頼を受ける。笹塚は従妹と雪穂が交際していることを知り、得体のしれない雪穂の調査依頼をしたのだった。雪穂の怪しい点として、一成は言う。「①雪穂の試算に不透明なとこ路が多い点②彼女と深く関わる人間は不幸になる。」今枝は雪穂の調査を開始し、江利子や元岡邦子と会いあ無をしたり、過去の出来事を洗い出す。
【第十一章】
今枝の視点
雪穂の調査結果を一成に話す。「雪穂が買った株は購入後100%伸びていること。株は引き払ってはいない。ある日、絵里のアパートに何者かが侵入している形跡が発見され、盗聴器が仕掛けられていることを発見する。今枝は、雪穂が今枝を探っているということを確認するために設置したと推測する。今枝が雪穂を調査していると知った笹垣がやってきて、今枝に雪穂の調査をやめるよう忠告する。しかしそこで今枝はあることを発見する。笹垣が持ってきた桐原亮司と呼ばれる男の写真がメモリスティック社の秋吉(亮司)だと。そして、千都留にゴルフスクールを進めていたのも秋吉(亮司)だと。しかし、そのあとすぐに今枝は行方不明になる。
【十二章】
●栗原典子:薬剤師。秋吉(亮司)と同棲
典子の視点
典子は秋吉(と名乗る実は亮司)に惚れて、同棲をしていた。ある日亮司が突然仕事で大阪に行き、典子もついていくが、特に何もわからなかった。亮司はミステリー小説を書いていると言い、青酸カリを見たいと典子に依頼し典子はそれに従う。その一週間後、典子は土がべっとりついた秋吉の靴と、今枝事務所と書いたファイルを発見する。また、先日渡した青酸カリは半分に減っていたのだった。
【伏線】
P754 典子は婚活情報サポートに登録していた。結婚情報サポートはメモリスティック社が管理
一成の視点
雪穂の義母が急死し、従妹の康晴に雪穂の助けになるよう指示された一成は大阪に向かう。そこで、義母が無くなったタイミングが良かったことを耳に挟む(雪穂の3号店オープン日が近かったため)
【十三章】
笹垣の視点
笹垣は19年前の事件をずっと追っていた。なぜそこまでの執念を見せるかというと、数年前にある事実を知ったからであった。「桐原洋介を殺害したのは子供である可能性があること②桐原洋介は幼女を好んでいたこと③亮司と雪穂は良く2人で遊んでいたこと」そこで笹垣はある恐ろしい仮説を導き出す。19年前の事件の真相は「洋介が雪穂を犯している現場をみた亮司が鋏で洋介を殺したのではないか」と。
笹垣は、これ以上不幸な人を増やしてはならないと、雪穂と亮司を追う。そして雪穂が『R&Y』という店舗を大阪に出すことを知る。雪穂の近くに亮司が現れることを悟った笹垣は店に向かう。
そこで亮司を発見し、目が合う。亮司は逃げ出し、所持していた鋏で自殺をした。近くにいた雪穂は振り返ることなく、遠くへ歩いて行った。