きままに図書館

年間120冊ほど本を読む”本のむし”です。心に染みた本たちの備忘録&ご紹介をしていきたいと思います。ネタバレありますのでご注意願います…!

『夜は短し、歩けよ乙女』森見登美彦/あらすじ・ネタバレ・感想

『夜は短し、歩けよ乙女』森見登美彦

2006年に山本周五郎賞受賞、2007年の本屋大賞では2位を獲得した作品です。本作品は『四畳半神話大系』しかり、かわいい女性に恋をするちょっとおバカな大学生の恋愛物語です。恋愛物語と書いてしまいましたが、そんな甘酸っぱいものではないような気もします…2017年にはアニメ映画化もされており、第41回日本アカデミー賞/最優秀アニメーション作品賞を受賞しております。声を星野源さん、花澤香菜さんが担当しました。

 

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あらすじ(KADOKAWA

クラブの後輩の女の子を「黒髪の乙女」とよんで、ひそかに片思いしてる「先輩」。なんとかお近づきになろうと今日も「なるべく彼女の目にとまる」ナカメ作戦として乙女が行きそうな場所をウロウロしてみるけど…行く先々でヘンテコな人達が引き起こす事件にまきこまれ、ぜんぜん前に進まない! 天然すぎる乙女と空まわりしまくりな先輩の予測不能の初恋ファンタジー

 

内容/ネタバレ

本作では、1つの時間を「彼女側から見た場合」と「私側から見た場合」の2パターンで描かれます。下記あらすじでも「彼女の語り/私の語り」という風に「/」で区切っています。

 

【第一章:夜は短し、歩けよ乙女】

“私”が“彼女(黒髪の乙女)”に認知してもらう一夜のお話です。

サークルの先輩の結婚式に招待された私と彼女。

彼女はお酒が飲みたくなり2次会に行かず飲み屋を探す/は2次会には行かず木屋町から先斗町界隈を歩く彼女の後を付ける → 彼女はお店に入り藤堂と話す。藤堂に乳を揉まれる/は彼女を見失っている → 彼女を羽貫・樋口が助ける/李白にズボンを盗まれる → 彼女は羽貫・樋口と共に知らない大学のサークル(詭弁論部)の飲み会に参加 → 彼女は詭弁論部の飲み会で詭弁踊りを見る → 彼女は次のお店で元詭弁論部員で詭弁論踊り発案者のおじさんたちと飲む → 彼女は藤堂が李白からお金を借りていて窮地に追い込まれていることを知る → 彼女は李白と飲み比べをして勝利する/私は酒癖の悪い古本屋に絡まれ酒を飲まされる。同じお店に彼女がいることを発見 → 藤堂の借金はチャラになり、藤堂は彼女に抱き付く → 彼女は藤堂におともだちパンチをお見舞いする/私は彼女を助けようとしたが、酒の飲みすぎで彼女の目の前で倒れる → 彼女は私に「大丈夫ですか」と声を掛ける/私は彼女に拳を見せる。彼女は微笑んだ

 

 

【第二章:深海魚たち】

”私”と”彼女”が第一章に続き、2度目の接触をする章です

私は彼女が古本市に行くという情報を知り、古本市に行く/彼女も古本市に行く → 私は古本市の神(この時はただの少年だと思っている)にソフトクリームをぶつけられる → 私は古本市の神によって犯罪者扱いされそうになり、千歳屋の若旦那に助けてもらう/彼女は過去に手放してしまった『ラ・タ・タ・タム』の事を思い出しもう一度手に入れたいと思う → 私は千歳屋の若旦那から「売り立て会」での勝負に勝利をしてある本を手に入れて欲しいと依頼される(報酬10万なので承諾) → 売り立て会で私は樋口と遭遇し彼女がラタタタムを探していることを話す。(売り立て会にラタタムも出ていた) → 私は根性で売り立て会で地獄の火鍋を食べ続け勝利/彼女と古本市の神が出合い、彼女に「ラタタタムは見つかる」と告げる → 私は勝利したが、会場に空から突然暖炉が降ってくる(古本市の神の仕業) → 李白の所持していた本が古本市の神によって古本市にばらまかれる→私は古本市で『ラタタタム』を見つけ、手を伸ばすと彼女も手を伸ばす。照れて逃げる/彼女は古本市で『ラタタタム』を見つけ手を伸ばすと私(彼女からすると先輩)と手が触れる。先輩が本を譲ってくれたのだと感動する。 → 私は逃げたことを後悔して、自暴自棄になり『新輯内田百閒全集』を購入しようとするがお金が足りない。その時彼女が来て、お金を貸してくれる。

*売り立て会とは:李白が開催している。販売されるのは李白が集めたコレクション。支払いについてお金のやり取りではなく、命のやり取りが行われる。その代わり、かなり凄い品物が出品される。

 

【第三章:ご都合主義者かく語りき】

季節は晩秋、"私"と”彼女が”抱き合う章。

*「ナカメ作戦」= 偶然を装い「なるべく彼女の目にとまる作戦」

 

彼女は射的屋で緋鯉のぬいぐるみを獲得し、紐を貰い背負っていた / 私は緋鯉を背負っている彼女を目撃し追跡 → 彼女は羽貫、樋口(韋駄天コタツ)、パンツ総番長と豆乳鍋を食べる / 私は彼女を見失い象の尻と出会う。「なんじゃこりゃ、つまらん」とつぶやき紀子に立腹され、臭い物質を掛けられる →彼女は「像の尻」と出会い感動し紀子と知り合いになる → 彼女は偏屈王の「プリンセス・ダルマ」の代役を任命され台本を渡され暗記する → 彼女はプリンセス・ダルマを完璧に演じる → 私は偏屈王の作者はパンツ総番長だと気づき、最終回の『偏屈王』を自分が演じたいと名乗る(ラストシーンはプリンセス・ダルマと偏屈王が抱き合うため → 無事彼女と私は抱き合う

 

【第四章:魔風邪恋風邪】

季節は冬、"私"と”彼女が”最終的にデートする章

李白の風邪が移りに移り町中の人が風邪をひきます。彼女は私を見舞いに来てくれて、熱の影響もあり私はついにデートの依頼をします。彼女はそれを受け入れます。喫茶『進々堂』で私と彼女は待ち合わせをして、私は何を話そうか…そわそわしながら待っているのでした。彼女は話したいことが沢山で喫茶店の扉をあけました。終わり

これより先二人がどうなったか書かれていませんが、文中の内容でおそらくうまくいったのだと思います!

私「私には、いろいろと彼女に聞きたいことがあったのだー彼女はあの春の先斗町で、どんな夜を~」P318

彼女「私には先輩にいろいろ聞きたいことがあったのですー先輩はあの春の先斗町で、どんな夜を~」P317

 

登場人物 

・私(語り手)

大学生。黒髪の乙女に恋をしている

・彼女=黒髪の乙女(語り手)

クラブの後輩。必殺技はおともだちパンチ。大酒飲み。

・東堂

東堂奈緒子の父。李白からお金を借りている。

・樋口

年中浴衣を着ている。=韋駄天コタツ

・羽貫

麦酒を水のようにのむかっこいい女性。酒癖が悪い。

・藤堂奈緒

赤川康夫と結婚。

 ・赤川康夫

藤堂奈緒子と結婚。

・高坂

奈緒子の事が好き。結婚すると聞き自暴自棄になって英国へ旅立とうとする。

・詭弁論部部員たち

英国へ旅立とうとする高坂の為に詭弁踊りを披露する

李白

金貸し屋。古本市では貴重な本の売り立て屋。電気ブランを沢山持っている。

・内田

還暦祝いをしていた上京区のお医者さん。赤玉ポートワインを飲んでいる

・赤川

還暦祝いをしていた。赤川康夫の父。元詭弁論部員で詭弁踊り考案した方々の一人

・古本市で出会う10歳の少年

古本市の神。

 ・千歳屋の若旦那

私の窮地を救う。葛飾北斎の幻の春本がほしい

・千歳屋のご主人

古今和歌集写本を手に入れるため売り立て会に参加

京福電鉄研究会の男

時刻表を手に入れるため売り立て会に参加

・事務局長

私と同じ学部。男にはもったいない美貌を持つ

・韋駄天こたつ=樋口

タツに入って、校内をうろうろしている。

・偏屈王

プリンセス・ダルマを主人公とするゲリラ演劇「偏屈王」に出てくる王

・パンツ総番長=偏屈王の脚本家

願い事が叶うまでパンツを履き替えないと誓った。紀子と結ばれる。

・須田紀子

象の尻を展示する女性。パンツ総番長と両想い。

 

感想

初めてこの本を読んだとき、「なんだこれは!!」と衝撃を受けました。今までに読んだことのない展開、超超超個性的な登場人物!『四畳半神話大系』より先にこの小説を読みましたが、初めての森見登美彦ワールドについていけず、すぐに2週目を読みました(笑)もしかすると、私と同じような感覚に陥る人がいるかもしれません…でも気付くとクセになって3回目を読み、そのあとは『四畳半神話大系』『夜行』も読破してました!

 

大学生に戻りたいな~とつくづく思いす…。この小説に出てくる登場人物達のような”青春”を送りたい!!!それなりに楽しんだ大学生活でしたが、もっと自由に正直に生きておくべきであった!と思います。そして友達に無性に逢いたくなります~。彼女のセリフを引用して…「こうして出逢ったのも、何かの御縁」を大切に生きていきたいと思います!

映像化

2017年にアニメ映画化。

主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION「荒野を歩け」

映画も見ましたが、本を読んでた時に描いていた世界観がそのままで楽しめました。また、アジカンの歌もいい!「あの子がスケートボード蹴って~♪」とつい朽津さんでしまいます。ただ、小説を読んでから映画を見ることを強くお勧めします。映画だけを見た友達に「この映画は意味が分からなかった!」と言われてしまったので…

詳細はこちらのサイトに載っています。是非キャストのページを見てみてください。黒髪の乙女とパンツ総番長は思い描いていた通りでした!

 

kurokaminootome.com

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